会社名に「さん」「様」をつける? 電話応対・電話対応、電話で顧客満足を向上させるためのマニュアルにお寄せいただいた質問への回答を取り上げたいと思います。
ご質問の内容は、会社名や役職名に「さま」や「さん」をつけるのが正しいのか、それともつけるべきではないのかということでした。
会社名や役職名に「さん」「様」を付けない
答えとしては、「○○社さん」「○○部長様」のように、会社名や役職名に「さん」「様」を付けるのは現在では間違いとされているということです。
企業名を呼び捨てにしたからといって非難されたり、先方が気分を悪くしたりすることはあまりありません。
また、役職名は元来、相手を尊ぶ意味がありますから、「○○部長」のみで「さん」や「様」といった意味を含んでいます。
なぜ「さん」「様」を付けてしまうのか
しかし、営業や接客の現場などでは、「○○社さん」や「○○部長様」といった表現がよく使われます。
営業や接客の場で、このような表現が使われる理由には2つあります。ひとつは「その方が丁寧に聞こえるから」という単純なものです。営業や接客では過剰な丁寧さを目指す傾向があるからです。
自分を賢く正しく見せることよりも、相手に好感を持ってもらいたいということを重視した方が得な場面が時にはあります。完璧な「美しい」敬語であっても、相手への距離を感じさせてしまって逆効果の場合もあります。
「個」を消すための方法として
もう一つの理由、それは「個」を消した付き合いがビジネスの上で数多く成り立っているからです。今よりもビジネスが組織や会社に重きを置いていた時代、当時は会社名に「さん」をつけるのが礼儀であると考えていたそうです。
現在でも業界によっては「越後屋さん」などといった表現が通用するところもあるかもしれません。業界やその場の雰囲気を読むことも必要かもしれません。
筆者がメーカー派遣の販売員として小売店に出入りしていたとき、小売店の社員からは名前で呼ばれることはまずありませんでした。「△△(派遣元のブランド名)さん」と呼ばれていました。そして、お客様からは「販売員さん」です。
個人名が認識されていれば「△△(ブランド名)の○○(個人の苗字)さん」という風に認識され、そう呼ばれていたでしょう。現に、「○○さんから買いたい」とお客様から名指しされるほど「個」を立てた接客をしている人も沢山います。
「スタッフさんたち、集合してください」「三河屋さん、お醤油切れちゃったわ」といった表現は、「個」ではなく「役割」で人と接している場合に生まれます。それが悪いというわけではありません。「三河屋!」みたいに呼んだら悪代官のようですし、「スタッフ~!」と呼んだら横柄に聞こえてしまうでしょう。
場の雰囲気にマッチした使い分けを
本当にフォーマルな場面では「正しい」表現を、そうでもないときは周囲の慣習にある程度合わせた表現を、という風に使い分けるのも一つの手です。さじ加減が難しいところですが、周囲を見ながら、場面に応じて「自分も、相手も心地よい」言葉使いを心がけていきましょう。
業界用語は使わない
電話応対は、接客の一場面であるという認識を持つことが必要です。
日本のサービス、接客、おもてなしの心は、世界的にもきわめて高いレベルに昇華されているといわれます。それは武道や茶の湯など、日本独自の「道」の考え方が接客やサービスにも大きく影響を与えているからかもしれません。
電話応対においても、あくまで「先方の立場」を優先して考え、対応するようにしましょう。では、「先方の立場」とは何でしょうか?それは「思いやり」といい直すこともできるかもしれません。あまりにも抽象的なので、具体的に考えてみると、「先読み」ができるかどうかということでしょう。
「電話の相手はどのように感じるだろうか」
「どのような用件で電話をかけてきているのだろうか」
「言葉では、こういっているが、本当はどうしてほしいのだろうか」
こういった先読みができるかということです。
しかし、あまりに電話の相手のことを先読みしすぎて、とんでもない間違いをしでかすこともあるでしょうから、ここでは相手に不快感を与えない程度の電話応対ができる「先読み」を考えましょう。
簡単に言えば、会社の内部者や業界の人間にしかわからない「業界用語」を使わないということです。同じく、業界の人間にしかわからない話の進め方をしないということも含まれます。
すべての人があなたと同じ考え方、知識を持っているとは限らないのです。特にあなたが消費者の方から電話を受けるような部署にいるなら、そのような業界用語は厳禁です。
できる限り、わかりやすい言葉を選び、話す内容の筋道も一般的にわかりやすいものにしていかなければ、
「この担当者は何を話しているのか、まったくわからない」
「業界用語ばかりを並べ立てて、馬鹿にされた」
と悪い印象を与えてしまうのです。
電話応対は声だけの接客のシーンであると考え、お客様の立場を考えて、相手のわかる言葉遣い、話の筋道を立てられるように、日ごろからトレーニングしてください。 |